![]() 2003・08・13(水)〜2003・08・17(日) |
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お遍路3日目はいよいよ高知県を目指すものとなる。 この日のポイントは移動距離。高知県にある札所はこれまでのように密集したものは少なく、そのほとんどが長い移動時間を必要とされる。 一寺のクリア時間を長くとらざるおえない高知ではいかに迷わずに的確に巡拝していくかが攻略のポイントとなる。 この日は早朝4時半に起床。本日の目標である高知市に1分でも早くつけるようにと急ぎ足で出発することになった。 前日なぜか数回にわたって深夜に目が覚める。寝苦しいわけではなかったがなぜか起こされてしまった。 霊場を巡るということとなにか関係があるのではと少し不安になる。 前日の雨はすっかり収まり、晴天が広がっていた。 |
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| 第1日目 第2日目 第3日目 第4日目 最終日 | ||
| GO! | 第3日目 | |
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51番 石出寺 |
松山まで来たのだからせめてあの有名な「坊ちゃんの湯」を一目見ようと道後温泉に寄り道。 道後温泉といえば思い出すその有名な公衆浴場は、「千と千尋の神隠し」に出てくる「油屋」のモデルになったらしい。 まだ営業時間ではないのにも関わらず、すでに朝風呂に入ろうとしている人で行列ができていた。 当然ひとっ風呂浴びる時間があるはずもなく、とりあえずカメラに収めて遍路の道に戻る。 朝一で訪れた51番石出寺(いしでじ)の境内は、毎朝お参りしているのであろう近所の人たちで賑わっていた。どうやらこの寺は道後温泉も近いことから観光寺らしく、おそらく日中に来ていれば門前のみやげ物屋などが活気にあふれていたに違いない。 |
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50番 繁多寺 |
50番繁田寺(はんだじ)から46番浄瑠璃寺(じょうるりじ)まではほとんど一本道で巡拝できる。 しかもどの寺も道沿いにあるお寺ばかりなのでこの1連はかなり楽勝だった。 前日にも思ったことだが、札所クリアのコツは早朝にいかに多く巡拝できるかである。早朝は人通りや車通りも少なく、そして暗くて案内表示が見えにくいということもないので1日のうち一番迅速に行動できる時間帯と言えるのだ。 「早朝を制するものは四国を制す」 47番八坂寺(やさかじ)の山門前に「車に注意ぞなもし」と書かれた看板が。四国へ来たんだなーと感じさせられる。 46番浄瑠璃寺から45番岩屋寺(いわやじ)までは長い移動になる。ここでは安全を考慮し近道だろうと思われる山道を避け、大友山(標高407m)を迂回する国道33号という整備されたルート(土佐街道)を選択した。その途中三坂峠と言われる高所な峠道を越える。 ここは道自体はセンターラインのある整備された道で、車の走行には何の支障もない道路であった。 ただこの長い移動距離と激しい高低差をもつ峠は、歩き遍路にはかなりの「お遍路ころがし」であろうと想像された。 「逆打ち」をしているとほとんどのお遍路さんとは正面からすれ違うことが多い。 順打ちだと同じペースで巡拝してる人と暫く道連れになったりするらしいのだが、逆だと会ってもそれっきりだし基本的にはすれ違うのみである。 正面から出くわす「歩き遍路」をしている人たちは、その誰もが私が車に乗って長時間移動してきた道をこれから歩いて行こうとしている。 「歩き遍路」には屈強な若者もいれば老人もいた。中にはまだ年端もいかない少女のような女性もいた。どのお遍路さんも皆、迷いの無い確実な足取りであった。 過酷な道中で汚れた白衣に身を包み、真夏の灼熱に耐え、長期に備えた旅の荷物を肩に食い込ませ、弘法大師の分身と言われる「金剛杖」だけを頼りに、まさに気の遠くなるような行程を彼らは何かを求めて歩いていた。 私はこの旅で無事結願を迎えた時、「車遍路」がゆえに彼ら「歩き遍路」たちが求める「何か」を見つけることは出来ないのかもしれないと思っていた。だがしかし、そんな私でもこの四国88箇所には我々「お遍路」を突き動かす「何か」が存在しているということを確信することができた。 この時すでに私の中で、88箇所を制覇することが単なる「夏のイベント」ではなくなっていた。 |
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49番 浄土寺 |
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48番 西林寺 |
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47番 八坂寺 |
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46番 浄瑠璃寺 |
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45番 岩屋寺 |
国道から脇に逸れ、しばらく山間を走る(この辺の山道はとても整備されていて快適に走れた)。十数分走ると45番岩屋寺駐車場に到着。 ここの駐車場は200円要だった。 88箇所のほとんどが駐車場代を無料にしていることにとても関心していたのだが、中にはこうして有料にしている札所もある。 ここ岩屋寺は観光ムードの強いところでもあったので駐車場には係りの人間が常駐していた。だがそうでない札所ではわざわざ人を雇う余裕もなく「賽銭制」にしている所が多い。つまり、駐車場の入り口に簡単な木箱が据えらていて、利用者はこの箱に駐車場代を入れるのだ。 もちろん誰もそれを監視しているわけではなく、木箱に代金を入れるか入れないかは利用者の心ひとつとなる。まあ、仏事神事はその性格からどうしても値切ったりちょろまかしたりし難いものなので、大部分の利用者はその木箱に代金をいれるのであろう。でも、この駐車場での収入が果たして実際札所存続としての収入になっているのかどうかと思えば少々疑問ではあるが。。。 こんなことを言ってると「たかが200円でゴチャゴチャ言うな」と坊主に怒られそうではあるが(笑)。でもされど200円である。 45番岩屋寺は本日午前中の山場になったお寺であった。駐車場から本堂まで長い石段を歩くこと20分。もはや驚きこそしなくなったにしても、やはり20分間一気に駆け上がるのはきつい。すれ違うお遍路さんとの挨拶にも気持ちがこもる 「岩屋」というだけに本堂の裏手には大岩壁がそびえ立っていた。風や雨の浸食によって不思議な造形美を作り出しているその岩壁はロケーションとしては最高だった。 |
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44番 大宝寺 |
45番岩屋寺から来た道を引き返し、再び国道に出るまでの途中に44番大宝寺(たいほうじ)がある。この寺もロケーションは最高で、数百年生だと思われる杉林の中を参道が通っている。木々を縫うようにして差し込んでいる木漏れ日が、「霊験あらたか」という言葉を容易に連想させてくれる。 ここでは「自転車遍路」をしている2人の若者に出会う。おそらく学生であろうと思われたが、その自転車が俗にいう「ママチャリ」であるのに驚いた。 まあ、ママチャリであろうが高性能な自転車であろうが「自転車遍路」の過酷さは大して変わらないのだろう。 参道ですれ違いざま「ちわっす。」と言ったその若者がとっても爽やかだった。 参道の入り口の売店で「お接待」のお茶をいただく。売店のおばさんと少し話しができたので目に付いた「アイスクリン」をゲット。 88箇所ではなぜか「アイスクリン」を売っているところが多い。 人恋しくなって話相手を探すのにアイスクリンを買って店の人捕まえた。おかげで道中かなりの数のアイスクリンを食べることになった。 売店のおばさんに励まされ次を目指す。 |
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43番 明石寺 |
42番明石寺(めいせきじ)からまたまた長距離移動。長距離移動したあげくここでも迷う。 コンスタンスに3回に1回は迷っているようだ。迷っているロスタイムを除けばもう少し余裕のある旅になったかもしれない。 |
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42番 仏木寺 |
一つ峠を越えて42番仏木寺(ぶつきじ)に到着。この辺りも山奥ではあるが道はかなり整備されていて走り易い。ただ交通取締りには要注意だった。 (ここで白バイに追従される。Sの追従を諦めた白バイは、その後私の後方から猛然と迫ってきたクラウンを見事に仕留めていた。お見事。) 仏木寺でも門前のアイスクリン屋のおじさんと話す。もちろんアイスクリンはゲットである(笑)。 「その車、ホンダか?ホンダか?」となんだか嬉しそうにそのおじさんは話かけてきた。 とりあえず「変わった車だ」というきっかけがあるので、Sに乗ってると向こうも話しかけ易いようだ。一日中門前でアイスクリン売ってるわけだから結構退屈していたのであろう。 ここのおじさん、かなり親切に次からの道順を教えてくれた。あまりに丁寧すぎて覚えきれなかった(汗)。 仏木寺のおじさんの言うとおりに来て楽勝だった41番龍光寺(りゅうこうじ)。 ただこの寺の門前の道が一部Sギリギリ。両サイドのタイヤが半分づつ落ちていたかもしれない。 |
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41番 龍光寺 |
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40番 観自在寺 |
また移動に時間をかけて到着した40番観自在寺(かんじざいじ)。クリアのペースが当然遅くなっていくので気持ちも焦り気味になる。 観自在寺の参道(住宅地)を歩いているときに地元の小学生から「こんにちは」と声をかけられる。後ろから声をかけられたのでしばらく気づかなかったのだが、自転車で前にまわってもう一度挨拶してきたので私にだとわかった。 とっさのことで驚きはしたものの、「こんにちは」と挨拶を返す。 やはりお遍路の人にはきちんと挨拶しましょーと学校や家でも教えられているのであろう。しかし、よく私のいでたちを見て「お遍路さん」だとわかったものだ。。。。 |
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39番 延光寺 |
ひたすら海沿いを走ってやっと39番延光寺(えんこうじ)に到着。舞台は高知県と変わる。 本日のメインイベントが38番金剛福寺(こんごうふくじ)。お遍路出発前からチェックしていた札所だ。 なぜここがそんなに問題かというと、この寺は四国の最南端「足摺岬」に建っている寺で、この寺一軒に行くためだけに足摺岬まで片道1時間を往復しなければいけないのである。39番延光寺と37番岩本寺は同じ国道沿いにあって比較的近いにも関わらず、四万十川に沿って猛烈な寄り道を強いられることになるのである。 足摺岬に行くには海沿いに沿っていく県道27号のルートと、半島の中央の山を縦断し尾根づたいに最短距離で行く「足摺スカイライン」ルートの2つがあり、普通ほどよく整備された後者を選択して38番金剛福寺に到着することになる。しかし、ここで私とSは痛恨のミスを犯してしまう。道の分岐を間違え海沿いのルートを選択してしまったのだ。 案の定四国はこのようなミスを決して見逃してはくれず、ここでも怒涛の凶暴さを余すところなく見せ付けてきた。半島を周回するように延びる県道27は、断崖絶壁に車幅ギリギリでウネウネと約10キロ程続いており、もちろんガードレールなどは存在せず、誤って脱輪転落などしようものならそのまま永遠に誰にも発見されることなく海の藻屑となることは必至と思われるものであった。前日苦戦を強いられた60番横峰寺参道での攻防は実は四国88箇所制覇の単なる前哨戦にすぎなかったことをこの時思い知らされることになるのである。 時間と労力をかなり浪費してしまい、なんとか寺付近まで着くと、なんとお盆シーズンの混雑を考慮して交通規制がかけられていた。半ば強制的に寺から少し離れたところに車を停めさせられ、そこからは約5分間隔で運行されているシャトルバス(100円)にて金剛福寺へ向かうことになる。 せっかく苦労して来たところなので寺のすぐそばにある「足摺岬灯台」を見学。敷地内に立っている「ジョン万次郎像」が太平洋の大海原を見つめていた。 |
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38番 金剛福寺 |
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37番 岩本寺 |
激戦区高知での攻防はまだまだこれからであった。 足摺岬38番金剛福寺から37番岩本寺(いわもとじ)まではざっと100キロ近い移動を強いられることになる。88箇所の行程で最も長い移動距離である。この時すでに夕方5時をまわっており、37番に到着する頃には日没を迎えていることは確実となっていた。しかも本日の目標は37番を含むあと3寺。 この日、設定した宿泊地が高知県のほぼ中央地点に位置する高知市街のホテルであったため、翌日後戻りするというロスをしないようにもなんとか位置的に35番まで消化しなければならなかったのである。宿の設定の難しさを痛感させられる。 後から思えばこの日の宿の設定を37番岩本寺クリア後すぐの地点にして無理することなく早めに休養し、翌日の高知市土佐シリーズを万全の体制で臨むようにしておけばこの後に展開する壮絶な試練を体験することはなかったのであろう。 疲労感を隠せない状態で到着した岩本寺は、夕闇で覆われていた。 |
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36番 青龍寺 |
すっかり闇に包まれた土佐の道をひたすら爆走するお遍路S。 37番岩本寺からさらに30キロ以上離れたところに位置する36番青龍寺(せいりゅうじ)に行くには、海に細長く張り出た半島を延々と縦断しなくてはならない。 半島の入り口でこれまた強烈に道に迷ったのでGSで給油を兼ねて道を尋ねることに。 とと 「すいません。青龍寺ってどう行けばいいでしょうか?」 GSのおばさん 「え?これから青龍寺に行くの?もう閉まってますよ。」 とと 「いや、閉まっててもいいんです。とりあえずそこに行ければ。」 GSのおばさん 「ここからまだ1時間くらいはかかるんじゃないかねえ。」 とと 「(え。。。。え〜?そんなに?(汗))」 GSのおばさん 「お寺の近くに大きな国民宿舎があるからそこに泊まればいいさ。でないとほかにこの辺で泊まるところないからねえ。」 とと 「はい。。。。」 「実はもう一箇所行くんだよ」とはさすがに言えず、悲しいほど心配顔で見送るおばさんのGSを後にした。 真夜中の寺での行動に一抹の不安を感じたので、途中コンビニで懐中電灯を購入。 必至の形相で、懐中電灯のみを買うために駆け込んできたとてつもなく不信な男。その姿を見る女性店員の表情を今でも忘れることはできない。 とにかく暗闇の中、決死の覚悟で先を急いだ。 高校野球で有名な「明徳義塾高校」を超えてなんとか目的の寺に到着するも、そこは想像をはるかに絶する暗黒の地であった。Sのヘッドライトに浮かび上がる無数の地蔵が嫌がおうにも雰囲気を盛り上げていく。青龍寺は駐車場から長い石段を登らないと本堂に行けないお寺であったので、当然エンジンを切ってライトを消しておかなければならない。 とりあえず車から降りて石段を見上げてみる。するとなんとしたことか、まだヘッドライトを消していないのにも関わらず石段の中腹より上がまったく見えないではないか。周りからは得体の知れない物音が絶えず聞こえてきている状況の中、比較的明るいと言われている「ディスチャージ・ヘッドライト」をもってしてでも明らかにできないような場所に脚を踏み入れることなど、この時まさに不可能であったことは想像に易いであろう。ましてや、その場所が「寺」であり、そこにコンビニ製の粗末な懐中電灯1本を装備して果敢にも参拝に挑むことなど、まさに「神業」と呼ぶにふさわしいものであった。 この寺が88箇所中、唯一本堂以外で参拝を終えた札所になったことはここで言うまでもないであろう。 |
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35番 清瀧寺 |
暗黒の36番をさっさとクリア後、本日最後の札所35番清瀧寺(きよたきじ)に向かう。 途中誤って高速道路の入り口に進入および逆走などというような軽い迷走をしながら、清瀧寺への標識をかろうじて見つけ参道を進む。 整備された比較的広い農道を走りながら「ラストは楽にクリアできそうだ。」と思っていた矢先、住宅地に入ってその道が突然猛烈に狭くなる。 民家の敷地のようなところをすり抜けて前進していくS。側面は民家の壁、もう片方はその道に沿って流れている河川に落ちないように設置された鉄製柵が迫っていた。おそらく左右のクリアランスは各5センチほどだろう。誤って「歩き遍路」用の道に迷いこんだかと思ったが、地図にはその道しか載っておらず、手作り感抜群の木製道しるべが「対向車注意」とここが車道であることを悠然と誇示していた。 民家を抜け山道に入ると両側からの圧迫が道から無くなり、それと同時に勾配の変化が始まった。 勾配が急になり始めた瞬間、この道が今までのそれとはまったく異質なものと気付く。 裏返って落ちてしまいそうな急勾配。 切り替えし2回を必須とさせられるツヅラ折れ。 相変わらず姿を変えない道幅。 そして暗黒。 おそらくこの道をS2000で上がった者はいまだかってないであろうと思われた。 私が88箇所でもっとも危険な道として推奨するのは、愛媛の強豪横峰寺参道、足摺御崎を周回する県道27号、またはこれから参拝していく「お遍路ころがし」の勇「12番焼山寺」への道などではなく、ここ35番清瀧寺参道なのである。 ただ今回この悪路を突き進むにおいて、真夜中での参拝だったがゆえに他に参拝者がいず、対向車が一台もこなかったことが唯一の救いであった。幌を閉めた状態では後方視界がゼロに近いSで、あの悪路をバックで数キロ降りることなど到底できる話ではなかったのである。 なんとか境内にたどり着くと意外にも境内にはオレンジ色の常夜灯が設置されており、36番で味わったような暗黒の恐怖は感じることはなかった。 88箇所札所の中には「宿坊」という宿泊施設を備える寺が数件存在し、「宿坊」は主にお遍路さんの宿として機能している。「宿坊」のあるところでは当然防犯上の点からも照明は常設してあるのだ。 照明によって神々しくライトアップされた本堂で静かに手を合わせていると、少し離れたところでうずくまるようにして願をかけている女性に気付き驚く。 そのイデタチは宿坊に泊まって旅の疲れをとっているようには見えず、どちらかと言えば今まさにここに到着したといったようなお遍路の正装を着こんでいた。参拝を終えたその女性は、変わった車で登ってきた中途半端なお遍路スタイルの私を見つけると、立ち上がって少し物珍しそうに私を見つめた。 「こんな時間にお参りですか?」 そう言って近寄ってきたその女性の姿がライトにうっすらと照らし出される。小柄で年の頃なら40才前後だったろうか。いや、もう少し年配だったかもしれないし、案外私よりも若かったのかもしれない。夜の境内映える白装束に、束ねた長い髪が不自然に浮きあがって見えた。 「ええ、車で逆周りにお遍路をしています。今日はここで終わろうと思ってるんですよ。」 と真夜中での遭遇に少々驚きつつも笑顔を作って言葉を返す。話し相手には飢えていた。 「それはご苦労様ですね。泊まるところは決めているのですか?晩御飯、食べましたか?」 女性のその質問がいささか唐突に思えて一瞬言葉を呑む私。 「宿は決めてあるんですが、ビジネスホテルなので食事はついてません。この時間でも開いてる食堂を探さないと。」 そう答えると女性は食堂は近くには少ないのでコンビニ弁当を買うしかないと言う。車で数分も走って市街地へ行けば居酒屋くらいあるだろうと思ったが女性の善意の助言に対して無下に反論することもないと思い、「そうですね。そうします。」とうなずいた。 聞けばその女性はこの寺のふもとに住んでいる人らしく、毎日軽自動車でここまで上がってお参りしているとのこと。 あの過酷な山道を軽自動車とはいえ大変だろうと言うと、慣れたので平気だと軽やかに答える。 真夜中の寺での二人っきりの会話が静寂に包まれた聖域に反響していた。 和やかに話すことができているのにどこか緊張感を覚えずにいられなかったのは、その女性の願をかけている姿が脳裏に焼きついてたのと、女性一人が過酷な山道を毎日参拝に往復しなければならない理由をどうしても想像してしまっていたからだろう。 「まだまだ先は長いから気をつけて行ってらっしゃい」と言い見送ってくれたその女性は、Sのドアミラーの中で手を振っていた。 境内に一人残された彼女は私が去った後もこの寺で願をかけ続けるのであろう。 「お遍路」の一期一会は切なく儚い。 3日目終了 17箇所クリア 残り34寺 51番石出寺〜35番清瀧寺 519.4キロ |
| 高知脱出怒涛の4日目 激走室戸岬! | ||
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